最新健康ニュース 2015年前半最新の健康ニュースや最近発表された研究成果、論文などをいくつか、ダイジェストでおとどけしましょう。あなたの食生活、サプリメントプランの参考にしていただければ幸いです。 脂肪信号が脳のエネルギーレベルを制御体脂肪組織から分泌された酵素が、脳のエネルギーレベルをコントロールしているようだとの米国ワシントン大学の研究報告が、2015年4月23日の「細胞メタボリズム」に掲載されました。 主任研究者の今井眞一郎教授は、「脂肪組織が興味深い方法で脳機能を制御していることを示した」とし、「この結果は、老化や長寿を司る脳のコントロールセンターの機能を最大化するための、最適な体脂肪量が存在する可能性を示唆している。今のところ、その量や個体間で差があるかなどは不明だが、少なくともマウスでは、カギになる酵素が脂肪細胞で充分に生産されないと、脳の重要な部分がエネルギーレベルを維持することができない」と、語っています。 本研究結果は、多くの研究が示している、若干太めの人のほうが生存確率は高いという現象を説明する助けになるだろうといいます。 「歳をとったとき、少し体重が多めの人の方が健康上の問題が少ない」と今井教授。「誰もその理由が分らないが、我々の研究が示しているのは、適切な体脂肪量がないと、代謝と加齢をコントロールしている脳の特に重要な部分に問題がおこるということだ」。 今井教授がいう「脳の特に重要な部分」というのは、「視床下部」のこと。交感神経、副交感神経機能および内分泌機能を全体として総合的に調節していて、体温調整、心拍数、血圧、摂食行動や飲水行動、睡眠なども調整しています。 この研究では、視床下部のエネルギーレベルと、あらたに見つかった体脂肪組織の機能とを関連づけています。
パパイン酵素がアレルギーの原因に「ダーマトロジー研究ジャーナル」4月号に掲載されたウィーン医科大学などの研究によると、化粧品等に使われているパパイン(パパイヤ由来のタンパク質分解酵素)がアレルギー原因になる可能性があるとのことです。 皮膚はタイト・ジャンクション(密着結合)と呼ばれる細胞結合により組みあわさった複数の層から成っています。今回の研究では、パパインによってこのタイト・ジャンクションの分解が誘発されることが示されました。パパインを皮膚に塗ると、皮膚のバリア機能が失われてしまうのです。 パパインによって皮膚バリアが壊されると、感染症にかかったり、パパイン以外のアレルゲンの進入によってアレルギーが発生する恐れがあります。たとえパパインによる皮膚バリア破壊が起こらなくても、アレルギー発症の可能性があることも研究チームは突きとめました。 今回の研究では驚くことに、パパインの構造がハウスダストに含まれアレルギーの原因となるダニ(の糞や屍骸)に非常に良く似ていることも明らかになりました。 研究チームは「肌が敏感な人や子供はパパインの含まれる製品(化粧品)の使用を控えるべきだ」と述べています。
スルフォラファンに口腔ガン予防効果?ブロッコリースプラウト(ブロッコリーの若芽で、スルフォラファンを豊富に含んでいる)の抽出物が口腔ガンの予防に有効で副作用もないというピッツバーグ大学の研究が、2015年アメリカがん研究協会年次総会(4月)で発表されました。ちなみに、口腔がんは治療後の再発リスクが高い上に、再発した場合に生存率が低い傾向にあるとされます。 アブラナ科の野菜(キャベツ、ブロッコリー他)にはスルフォラファンという物質が豊富にふくまれており、環境に由来する発がん性物質の悪影響を緩和することが複数の研究で示されています。 この研究では、まず口腔がんの発症リスクを高くしたマウスにスルフォラファンを数ヶ月に渡って与えました。その結果、口腔がんの発症率は低く、発症した場合でも腫瘍の数が少なかったのです。 次に研究チームは、健康な10名にブロッコリースプラウトのエキスを混ぜた果物ジュースを飲ませる試験をおこないました。すると被験者たちの口内の粘膜に保護的な変化が見られました。つまり、経口摂取したスルフォラファンが体内に吸収され、口腔の組織に作用したということです。
夜間の絶食時間が長い女性は、血糖値も乳がんリスクも低い女性の場合、食事をする時間を短縮し、夜間の絶食時間を延すことが、血糖値を下げ、乳ガンリスクを減らすようだ、というカリフォルニア大学サンディエンゴ校の研究報告が、2015年4月の「がん疫学とバイオマーカー及び予防」に掲載されました。 「夜間の絶食時間を長くすることは、乳がんのリスクを低下させるための新奇な戦略である」と筆頭研究者のキャサリン・マリナック。「これは多くの女性が簡単に理解し実行できる単純な食生活の変更。複雑なカロリーや栄養素の計算をすることなく公衆衛生的に大きなインパクトを与えられる方法だと思う」と、語っています。 研究チームは、2009-2010年の米国国民健康栄養調査のデータを用いて検討をおこないました。夕食後、朝食までのあいだ何も食べない時間が長い女性は血糖値のコントロールがうまくいっており、食事量に関わらず、夜間絶食3時間ごとに食後血糖値が4%低下することを示したとのこと。 これまで、がん予防のための食事アドバイスといえば、赤肉、アルコール、精製穀物の摂取を制限するとか、野菜をたっぷり食べることなどが中心でしたが、今回の研究に携わった准教授は、「この新しいエビデンスは、食事をするタイミングもまた、がんリスクに影響することを示唆している」と、語っています。
慢性的な高血糖が体に悪いのは・・慢性的な高血糖が体に悪い理由の解明が、米国のジョンズ・ホプキンズ大学の研究により進み、5月に「国立科学アカデミー会議録」のオンライン版に掲載されました。 今回の研究では、糖尿病のネズミと健康なネズミとで心臓から採取したミトコンドリア(栄養素をエネルギーに変換する小器官)の中に存在する2種類の酵素の量の違いを調べました。調査対象となった酵素は、O-GlcNAcと呼ばれる分子をタンパク質に付加する酵素(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)と、この分子をタンパク質から除去する酵素(O-GlcNAcアーゼ)です。 調査の結果、糖尿病(慢性的高血糖)のネズミのミトコンドリアには、O-GlcNAcトランスフェラーゼが通常より多く、除去する酵素が少ないことが明らかになりました。 さらに、糖尿病のネズミでは通常であればミトコンドリア膜に埋め込まれている、O-GlcNAcトランスフェラーゼの多くがミトコンドリア内部へと移動してしまっていることも明らかになりました(エネルギー生産にはミトコンドリア膜に埋め込まれている複数の酵素複合体による相互作用が必要になる)。 高血糖のネズミにみられたこうした異常により、ミトコンドリアでのエネルギー生産効率はダウンします。それによって副産物として発生する熱量が増え、細胞へのダメージをあたえる活性酸素(フリーラジカル)が増加します。これに対応するために肝臓では、抗酸化プロセスがスタートするのですが、それに付随してブドウ糖の生産量が増えるために血糖値がさらに上昇することになるとのことです。
筋肉トレーニング時のタンパク源として大豆は不適切?南オーストラリア大学の新たな研究により、大豆プロテインは、乳ベースのプロテインに比べ、筋力トレーニングの効果を低減させると、2015年5月の「臨床栄養」誌に掲載されました。 この研究では、中年の男女に筋力トレーニング・プログラムに参加してもらい、その時に、さまざまな種類のタンパク質を、量を変えて摂取してもらいました。摂取するタンパク質の種類、量、質などによって、筋肉の増加がどのように変ってくるのかを調べたわけです。 すべてのグループは、肉類を含む、オーストラリアで平均的な内容の食事をしてもらいました。 その結果、いずれのグループも筋力は増加していたものの、平均的な食事に加えて大豆食品でタンパク質を補っていたグループは、普段の食事だけのグループや乳製品でタンパク質を補ったグループに比べて、あまり筋力が増していませんでした。 研究者は、「大豆食品に含まれているイソフラボンにエストロゲン(女性ホルモン)のような作用があるので、筋力とトレーニング直後に放出されるテストステロン(男性ホルモン)の筋肉増強効果が損なわれているのではないか」と、推測しています。 「筋力トレーニングと併用する栄養補助食品として、乳製品や肉などの良質タンパク質を選択し、大豆食品を避けるようにしたほうが、筋力トレーニングの効果が十分に得られるでしょう」と、研究者は、結論づけています。
血糖値が高いとアミロイドβが蓄積しやすく、アルツハイマー病にこれまでの多くの研究で、U型糖尿病がアルツハイマー病に関与しているであろうことが示されていました。5月の、”The Journal of Clinical Investigation”に掲載されたワシントン大学の新しい研究は、人々から記憶を奪うこの病が高血糖の影響によるものである可能性を示唆するものでした。 この研究では、アルツハイマー病に相当する病気を発症するように飼育されていたマウスの血流中にブドウ糖を注入するという実験をおこないました。ブドウ糖の注入により血糖値を2倍に増加させたところ、脳におけるアミロイドβ(アルツハイマー病患者の脳に見られるプラーク)が急速に増え、蓄積量は、若いマウスでは20%、年をとったマウスでは40%も増加したのです。 この研究では血糖値の急激な上昇によって脳のニューロンの活性が増加し、それによってアミロイドβの生産が促進されていることも示されました。
|
HOME > 2015年