第21回 THE REQUESTアルカリ性/酸性のことで頭が混乱しているのですが・・ |
混乱の元を解き明かす9月号ナターシャ・タイムズの膀胱炎についての記事で、「酸の多い(すっぱい)果物は尿をアルカリ性にし、細菌の増殖を促進〜」と書いたところ、「アルカリ水も悪いのですか?」「果物はアルカリ性食品で、動物性食品が酸性なのでは?」などなど、多くの質問がよせられました。 こうした疑問が頭に浮かぶというのは、食品そのものと食品分類をごっちゃに考えてしまっているからに他なりません。今回は、その混乱の元を解き明かしましょう。 アルカリ性食品/酸性食品の食品分類って?食品そのものの【酸性度/アルカリ度】と【アルカリ性食品/酸性食品】という『食品分類』とは、まったく別物なのですが、どうしても混同して考えてしまいがちです。 【アルカリ性食品/酸性食品】の分類というのは、食品そのものではなく、食品に含まれるミネラルが酸性かアルカリ性かで判断しているもの。したがって、食品そのものが(たとえば、酸っぱい果物にリトマス紙をつければ)「高い酸性」を示しても、そこに含まれミネラルがアルカリ性であれば、【アルカリ性食品】に分類されるのです。ややっこしいですね。
こうした『食品分類』は、1980年〜1990年代に、健康法としてかなり注目を集めました。しかしながら、医学的にも栄養学的にも疑問視され、こうした分類は無意味ということで、現在はほとんど無視されています。今でも一部健康食品業者が、こうした古い理論を持ちだして商品の販売に結びつけているケースもあるようで、混乱してしまう人も多いのですね。 酸性食品を多く食べると病気になる??【アルカリ性食品/酸性食品】分類全盛の時代には、「現代人は、酸性食品ばかり食べているから体液が酸性に傾いて病気になる。酸性食品を控えてアルカリ性食品をとるか、酸性食品をとるならアルカリ性食品をよけいにとる必要がある」ということが盛んにいわれていました。 たしかに納得しやすい内容ですよね。でも、体にはフィードバックシステムが備わっているため、酸性食品を食べたところで、体液が酸性になることはないのです。 酸性・アルカリ性を示す方法としては、ペーハー値(pH)が使われるのはご存じでしょう。pH 7.0 が中性。これより数値が大きければアルカリ性、小さければ酸性ですね。私たちの体液(血液やリンパ)のpH値は、7.35 〜7.45が正常で、弱(微)アルカリ性に常に調整されています。もし、pHが7.30 より低くなれば、体は危篤状態に陥ります。つまり、体液が酸性(7.0以下)になるということは現実的にあり得ないのです。 酵素の働きのために、pHはコントロールされている人体のペーハー値が、これほどまで狭い範囲でデリケートにコントロールされているのは、酵素の働きを維持するために必要不可欠だからです。 一般に、酵素は細胞内で働きますが、そのときの環境のpHによって、酵素の活性は変わります。酵素には至適pHがあり、それより、ほんの少し大きくても小さくても、活性が低下してしまいます。酵素の活性が低下すれば、体内のさまざまな代謝に支障が出て、体調が崩れることになります。 すべての体の機能は酵素の働きにかかっています。体液のアルカリ度がさがると酵素の働きはにぶり、体の具合は悪くなっていく…。だからこそ、体液のアルカリ度は、体のフィードバックシステムにより、微妙に調整されているのです。 巧妙なフィードバックシステムその微妙な調整を支配しているのは、主として、pHをあげる働きをするカルシウムイオンと、pHをさげる働きをするリン酸イオン。 食事からのカルシウムの摂取量が不十分だと、血中カルシウムイオンの濃度がさがり、体液のアルカリ度もさがります。そうなると酵素は働けなくなり、体は危機的状況に陥ってしまいますから、それを防ぐため、体はすぐに「副甲状腺ホルモン」を分泌して、手や足の骨端を溶かしてカルシウムイオンをつくり、pHの調整にかかります。
私たちの体にはこのようなフィードバックシステムが備わっているからこそ、【アルカリ性食品/酸性食品】の分類は、“無意味”ということになったワケですね。 ちなみに、このフィードバックシステムは実に巧妙なしくみではありますが、困った問題も…。カルシウムが余分に溶けてアルカリ度が高くなりすぎるため、カルシウムイオンはあわてて、動脈壁・心筋・腱・腎臓などに沈着することに…。石灰化といわれる現象ですね。こうしたことを起こさせないためにも、毎日、食物からのカルシウムの補給も大切ですね。 |