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ミトコンドリアの機能を上げて「疲れ」を解消! 若返り、疾病予防、認知機能改善も!

ミトコンドリアの機能を上げて「疲れ」を解消! 若返り、疾病予防、認知機能改善も!

秋の気配を感じるようになって、夏の疲れがド~っとでてきていませんか?
長びくコロナ禍によるストレスも、それに拍車をかけていることでしょう。

「ゆっくり寝れば疲れはとれる」、「エナジードリンクを飲めば一発で元気になる」。
確かにそうでしょう。でも、それって一時的では? 「疲れ」は、体内の”エネルギー生産工場”である<ミトコンドリア>に目を向けないと、根本から解消することはできないのです。

共通するのは、ミトコンドリアの機能低下

一口に「疲労」といっても、エネルギー不足からの軽い疲労感や倦怠感から、朝起きられない、あるいは、一日の特定の時間帯に疲労感にみまわれるもの、1日中まったく動くことのできないほどの疲労感に襲われるものまで、さまざまです。

疲労を生じさせる要因は、人間関係やライフイベントを含む社会的・心理的なストレス、温度や湿度、紫外線や電磁波による物理的ストレス、ウイルスやイースト感染、食物&環境性過敏症、ホルモン不足、栄養素不足などの生物的ストレス、化学物質・有害物質の蓄積などの化学ストレスなどいろいろです。

いくつかの要因が重なっているケースも多いといえますが、いずれの場合も根底には、ストレスが! どのような場合でも、まず、ストレスケアに目を向けることが大切であるということです。

そして、すべての疲労系トラブルに共通しているのが、ミトコンドリアの機能低下です。

24時間エネルギー需要にストップなし 

力仕事や運動で、身体を激しく動かしたときには、誰でもエネルギーを消費していることを感じるでしょう。でも、私たちの身体が多量のエネルギーを使うのは、身体を動かしているときだけではありません。

一回の食事を消化するには十数キロ走るくらいのエネルギーが必要ですし、物事を考えたり、イライラすれば、エネルギーは多量に消費されていきます。ただボ~っとしているだけでも、寝ているときでさえ、心臓は動いていますし、エネルギーが使われない瞬間はありません。

細胞レベルでいえば、アミノ酸をつなげて生命維持に必要なタンパク質をつくったり、糖から別の化合物をつくったり、脂肪酸の鎖を伸ばしたり、さまざまなホルモンやその他をつくったり、多くの代謝が進行していますが、それらすべての仕事にエネルギーが必要です。細胞の内外のミネラルバランスを保つために設置されたカルシウムポンプやナトリウムポンプを動かしつづけるにも膨大なエネルギーが必要です。エネルギー需要に一時も休みはありません。

身体を構成する37.2兆の細胞の1つ1つが十分なエネルギーの絶え間ない供給がなければ、私たちは生きていけません。でも、そのエネルギーを得るために体中に電線が張り巡らされているわけでも、バッテリーが装備されているわけでもありません。細胞内にはミトコンドリアという、「エネルギーの生産工場」が備わっており、ここで、体内で必要になるエネルギー分子ATPがつくられているのです。

体内のいかなる仕事もエネルギーなしには遂行されませんので、ATPづくりをしているミトコンドリアの数や質がエネルギー出力、つまり、あなたのエネルギーレベルはもちろん、全般的な健康状態を決めているといっても過言ではないでしょう。

あなたの疲れを解消するためにはもちろん、健康的なエイジングケアのベースとしても、ミトコンドリアについては理解しておいたほうがよさそうです。

体重の10%も占める、「ミトコンドリア」

ミトコンドリアは、身体のほぼすべての細胞内に存在し、身体で使われるエネルギーの90~95%をつくっている小器官です。1つの細胞には300個から数千個もミトコンドリアが存在(からだ全体では、京という単位の膨大な数)。細胞の体積の22%、体重のなんと10%を占めます。

特にミトコンドリアの数の多いのが、脳(神経)、肝臓、心臓、筋肉
などのエネルギー需要の多い細胞です。ちなみに、生のレバー(肝臓)は赤黒い色をしていますが、これは、ミトコンドリアを多く含んでいるからに他なりません。(1つ肝細胞には約8000個のミトコンドリアが存在し、ヒトの肝細胞の数は2500億個とされるので、肝臓全体では2千兆個のミトコンドリアが働いている!)

もし、ミトコンドリアの機能が低下するようなことがあれば、ミトコンドリアの数が多い臓器や器官ほど、その影響をうけるであろうことは、容易に想像ができるでしょう。

たとえば、脳。脳の重さは体重の2%程度しかありませんが、エネルギーの消費量は全身の約21%にも及びます。これは、筋肉をはじめ、すべての臓器/器官/組織のなかで、最も多い消費量です!!それだけ消費量が多いということは、ミトコンドリアの損傷や機能が少しでも低下すれば、ATP生産力が低下し、脳が正常に働くためのエネルギーが不足し、脳の機能に影響がでても不思議ではありません。

ミトコンドリアは、もともと別の生命体? 

ミトコンドリアはもともと別の生命体

ミトコンドリアは、10億年以上前に、私たちの細胞に侵入して共生をはじめた単細胞生物 (細菌)です。別の言い方をすると、細胞の内部に別の細胞を取り込み共生させているのです(細胞内共生)。

ミトコンドリアは自身のDNA(30種類程度のタンパク質づくりが可能)を持っていて、自律的に分裂増殖します。しかも、宿主の細胞分裂とは関係なく、独立して分裂、増殖をしています。

ミトコンドリアは生体にとって毒ともなり得る酸素をうまく利用して、それをエネルギーに変えて私たちの生命維持に貢献してくれています。高エネルギー物質であるATPを私たちの細胞に供給する見返りとして、私たち宿主は、ミトコンドリアが生物としていきていくために必要な1500種以上と見積もられているタンパク質を貢いでいるのです。

ミトコンドリアの働きとは?

ミトコンドリアの主たる働きはエネルギーづくりですが、そのほかにも、オートファジーとアポトーシスの制御にも関係しています。

エネルギーの産生

「糖質や脂肪はエネルギー源になる」ということは、聞いたことがあると思います。でも、糖質や脂肪はそのままでは体内のエネルギー源として使うことができません。体内での「仕事」は、原則的にATPの化学エネルギーを使用して進められることになります。

ミトコンドリアの主たる働きは、酸素を利用して糖や脂肪から、そのATPというエネルギー源をつくることです。ATPは“エネルギーの缶詰”とか“エネルギー通貨”ともいわれ、「食物成分のもつエネルギーを、化学結合エネルギーとして蓄えているもの」です。ATPは体内での働きに不可欠で、これがなければ心臓も動きません。

ミトコンドリア内でのATP (エネルギー)づくりは、2つの経路で進みます。

1   TCA回路(クレブス回路、クエン酸回路ともいう)
  有機酸を酵素によって変化する過程でエネルギーをつくる反応

2   電子伝達系
  酵素によって電子が移動する過程でエネルギーをつくる反応

ブドウ糖からのATPづくりには、もう一つ、ミトコンドリアの外で行われる解糖系がありますが、この経路でつくられるATPは極わずかでしかありません。
90~95%のエネルギー(ATP)は、ミトコンドリア内の上記2経路でつくられています。

体内のどんな仕事にもエネルギーは必要ですから、体内の臓器/器官、組織がしっかり機能しつづけるためには、ミトコンドリアでのエネルギー産生、すなわち、TCA回路がしっかり回り、電子伝達系がスムーズに進んでいくことが必須です。

エネルギーづくりに支障がでたら、「疲れやすく」なるだけではなく、体内のさまざまな機能の低下に直結することになります。特にエネルギー需要の多い臓器などでは影響大です。

オートファジー

最近、話題にのぼることの多い「オートファジー」とは、細胞内の不要なタンパク質をリサイクルするメカニズムです。

ミトコンドリアと小胞体の接触部分で、オートファゴゾームという小器官ができ、それが細胞内の不要なタンパク質や、できそこないのタンパク質を取り込み、リサイクルします。こうした余分なタンパク質をきちんと処理できなくなると小胞体ストレスが生じ、ミトコンドリア機能にも影響がでてきます。

(オートファジーはタンパク質以外にも、細胞内に侵入する病原体や、不良のミトコンドリアを分解します)

アポトーシスの制御(調節)

アポトーシスとは、「細胞の自殺」ともいわれます。活性酸素などで遺伝子DNAがダメージを受け、修復が追い付かないようなときには、細胞自ら自殺して悪影響を残さないようにするメカニズムです。このメカニズムの制御を、ミトコンドリアが受けもっています。

先にお話ししたとおり、ミトコンドリアはもともと別の生物で、私たちの細胞内に共生しているのですが、ミトコンドリアとヒトの細胞を結ぶ接点になっているのが、「小胞体」という小器官です。小胞体はミトコンドリアと共同で、オートファジーやアポトーシスの調節をしているのです。

体内の「仕事」はすべてエネルギーに依存しているので、ミトコンドリアの機能が低下してエネルギーづくりに支障がでれば、当然、これら2つの機能も低下します。小胞体の機能低下でも同様のことがおこります。

ミトコンドリア機能が低下する要因

加齢や不適切な生活習慣などによって、ミトコンドリアの数は減り、質も落ちてきます。当然エネルギーをつくる力が低下するので、疲れやすくなりますし、免疫力が低下したり、頭の回転が鈍くなるなど老化現象がでてきます。

本来、古くなったミトコンドリアは壊され、新しいミトコンドリアがつくられますが、加齢や悪い生活習慣ほか、さまざまな要因で、このミトコンドリアの入れ替えがうまくいかなくなり、老朽化したミトコンドリアばかりが目立ってきます。

古くなったミトコンドリアはATPをつくる能力が衰えるだけでなく、活性酸素を大量に発生するようになります。活性酸素は細胞膜を酸化したり、タンパク質や遺伝子DNAにまでダメージをあたえ、老化を促進していきます (当然疾病リスクもアップ)。

もともとミトコンドリアでのエネルギーづくりには、活性酸素が発生するのですが、古いミトコンドリアは若くて元気なミトコンドリアに比べ、なんと!発生量が5倍も多いとか! これがミトコンドリア自体にダメージを与えますし、細胞にとっても脅威になります。

何はともあれ、いつまでも若々しいボディとエネルギッシュな生活を維持していくには、ミトコンドリアを活性化して、代謝アップを図ることです。それには、まずトコンドリア機能がどのようなときに低下するかを見ておきましょう。

ビタミン・ミネラルなどの補酵素の不足

エネルギー(ATP)づくりには多くの栄養素が必要になります。

TCA回路をまわすのには、ビタミンB群やマグネシウム等を中心としたミネラル類、電子伝達系では、ナイアシンや鉄、CoQ10が必要になります。これらが不足すると、各経路の各ステップで酵素が働けず、エネルギーづくりに支障がでることに・・。

エネルギー(ATP)作りには、多くの栄養素が必要

重金属・化学物質の干渉

水銀、ヒ素、フッ素、アンチモンなどはTCA回路の酵素反応を阻害します。せっかくビタミン・ミネラルを揃えても、エネルギー代謝のプロセスは影響を受けることに。

カルシウム・パラドックス

カルシウムの過剰流入によって、ミトコンドリア膜透過性遷移孔PTPが開孔すると、低分子量の物質がミトコンドリア内に流入し、膨化し、TCA回路が作動しなくなってしまいます。当然、ミトコンドリア機能の低下が引き起こされます。

活性酸素の大量発生

ヒトの最大の活性酸素発生源はミトコンドリアです。特に、電子伝達系では大量の活性酸素が発生します。ミトコンドリアがきちんと仕事をしている限りは、漏れだす活性酸素は許容範囲です。でも、劣化したミトコンドリアでは、活性酸素は過剰に産生されてしまいます。

ミトコンドリアのDNAは損傷を受けやすく(核DNAの10倍!)、しかも修復能力が劣ります。ミトコンドリアのDNAの損傷が、私たちのエイジングー老化現象、認知機能ほか、さまざまな疾病に関係していることが最近の研究で明らかになってきていますし、過剰な活性酸素は、細胞の核に収納されているDNAにも損傷を与えます。

小胞体ストレス

小胞体は細胞内器官で、タンパク質の生産と貯蔵を担っています。ミトコンドリアは細胞と共存している単細胞生物ですが、そのミトコンドリアと細胞をうまくつないでいるのが小胞体です。

小胞体で製造したタンパク質が不良品となり、出荷できない不良在庫が増えてくると、小胞体に負荷がかかってきます。これを小胞体ストレスと呼びますが、この小胞体ストレスにより、小胞体は機能低下に陥り、ミトコンドリア機能も低下してしまいます。

廃用性萎縮

「廃用性萎縮」は医学用語で、「寝たきりや行き過ぎた安静状態が長く続くことによって起こる筋肉や関節などが萎縮すること」です。足を骨折して、ギブスをはめて長期間筋肉をつかわないでいると、ギブスを外したときに、筋肉が落ち、足が極端に細くなるのをご存でしょう?

筋肉や関節に限らず、人間の身体は使わないところから切り捨てていきます。ミトコンドリアも、使用しなければ、分裂(ミトコンドリア新生)は起きにくくなり、どんどんその数は減っていくのです。

ミトコンドリアの数が少なくなると、その分、残った1つ1つのミトコンドリアにとって仕事の負担は大きくなってきます。オーバーワークでお疲れ気味のミトコンドリアからは、より活性酸素が発生しやすくなり、DNAのダメージを進め、さらなる数の減少⇒機能低下に…。

ミトコンドリアを活性化・・元気にするには

ミトコンドリアを活性化!元気にするには

ミトコンドリアの機能低下を起こしている原因がわかれば、その対策も見えてくるでしょう。ミトコンドリアの機能低下の要因をひとつずつ潰していけばいいわけですから…。

質が悪くなり、機能低下に陥っているミトコンドリアを一転、活性化していくには、

① ビタミン&ミネラルの補給
② 腸内環境改善(ミネラルの吸収率アップ、酪酸菌を増やす(ミトコンドリア新生を促す)
③ 重金属のデトックス
④ 活性酸素対策
⑤ 運動
⑥ 小胞体ストレスの解消

等などが必要になってきます。

ミトコンドリアの活性化を謳ったサプリメントなどもお目見えしていますよね。でも、ミトコンドリアが機能を低下させる要因は多いので、サプリを摂取するだけで効果を期待するのは難しいでしょう。もちろん、うまく補っていくことは必要ですが…。

あなたのミトコンドリアを元気にし、目一杯エネルギーづくりに励んでもらうためには、大きくわけて、2つのステップがあります。

STEP  1: 1つ1つのミトコンドリアが、しっかり働けるように質を上げる

STEP  2:  ダメージをうけて減っていくミトコンドリアに歯止めをかけ、ミトコンドリアの数を増やす

それでは、それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

 STEP 1   ミトコンドリアの質を上げる

エネルギーづくりためのTCA回路、電子伝達系を回すには、栄養素の確保、適切な腸内環境、活性酸素対策、そしてデトックスが必要になります。

ミトコンドリアをきちんと動かすために必要な栄養素を摂取

ミトコンドリアを駆動する栄養素としては、ビタミンB群、 COQ10、NADH、マグネシウム、亜鉛、鉄など。こうした栄養素が不足しているかどうかは、血液検査の結果から推測できます。検査結果を観るまでもなく、「疲れ」が出ているあなたは、まずこれらが不足しているはず。積極的に摂取していきましょう。ただし、鉄に関しては、鉄欠乏と診断されていないかぎり、サプリメントでの摂取は控えます。

ミトコンドリアを動かすための栄養素を摂取する


活性酸素対策も忘れずに

エネルギーづくりは活性酸素を多量に発生させ、ミトコンドリアのDNAに損傷をあたえます。十分な抗酸化栄養素(ビタミンA (βカロテン)、C、E、セレニウム、フィト栄養素など)の摂取を心がけることも大切です。

腸内環境も大切

なお、栄養素をサプリメントなどでもしっかり補っているのに、効果が感じられないという場合は、摂取した栄養素が細胞に届いていない可能性も! 腸内環境が悪いと、腸内でつくられるビタミンが不足したり、ミネラルの吸収がうまくいきません。代謝に必要なタンパク質づくりのための原料も調達できません。まず、腸内環境に目を向けてみましょう!
身体に効くサプリメントの選択術

重金属や化学物質のデトックスを

有害ミネラル(水銀、ヒ素、アンチモンなど)や化学物質は、ミトコンドリア機能を邪魔します。

私たちは、日々の生活で多くの有害物質を体内に取り込んでいますが、その多くは、私たちの身体の解毒メカニズムで処理されます。しかし、処理能力を超えて体内への取り込み量が多かったり、解毒機能がうまく働いていない場合などは、有害物質は体内に蓄積していきます。排泄されない/されにくい金属をとりこんでいる場合も同様です。

私たちに備わっている解毒機能を向上させるには、腸内環境を整えることがとても重要になってきます。と同時に、その他のデトックス器官(肝臓・腎臓・皮膚・肺)も最善な状態で働き、体内の「ゴミ」を滞りなく体外に捨てられるようにサポートすることが必要です。
簡単デトックス法で有害物質を追い出し、体調不良をスッキリ

 STEP 2 ミトコンドリアの数を増やす

1つ1つのミトコンドリアの機能をあげることは、とても重要です。そしてさらに、ミトコンドリアの数を増やしていけば、それこそ鬼に金棒。エネルギー出力を高く維持することで、疲れにくく、頭の回転が速く、いつまでも若々しくエネルギッシュに過ごせるように! 

ミトコンドリアは何歳になっても増やすことが可能です。そのためのキーワードは、【運動】【空腹感】です。

有酸素運動+筋トレで効率よくミトコンドリアを増やす

有酸素運動+筋トレでミトコンドリアを増やす

「運動」というだけで拒絶反応を示す人も多いようですが、エネルギーづくりが必要になる状況をつくることでミトコンドリアは増えます。運動をまったくしていないと、「こんなにたくさんのエネルギー産生工場は必要ない」とばかりに、ミトコンドリアはどんどん休業⇒閉鎖してしまいます(廃用性萎縮)。

運動するとATPが消費され、不足してきます。すると、細胞ではAMPKという酵素が活性化し、「ミトコンドリアを増やせ」という指令を出します。ミトコンドリアはPGC1αというタンパク質が活性化されることでつくられるのですが、AMPKが働かないとPGC1αの働きも抑えられるので、ミトコンドリアがつくられなくなってしまいます。

AMPKを活性化し、効率よくミトコンドリアを増やすには、有酸素運動の合間にやや強めの筋トレをはさむサーキットトレーニングが効果的とされます。サーキットトレーニングというときつそうですが、ウォーキングの合間に筋肉痛にならない程度の刺激を筋肉にあたえる・・その程度でOKです。

ミトコンドリアを増やし、活性化する(代謝アップ)ために、私は長年AISをおすすめしてきました。AISとは、ウォーキングなどの有酸素運動 (Aerobics)+静的運動/簡単筋トレのアイソメトリックス (Isometrics)+ストレッチ(Stretching)のことで、これら3種類をうまく組み合わせていきます。

AMPKが活性化すると36時間ほど効果がつづくといわれますので、2日に1回、週3回のペースでAIS、あるいはサーキットトレーニングを行うのが理想的でしょう。

あまり激しい運動は活性酸素の発生を増やすことになるので、むしろマイナスになるのでご注意ください。

なお、効率よくミトコンドリアを増やすには、運動前になるべく食事をとらないこと。満腹になるとAMPKの活性が抑制されてしまうからです。

また、トレーニングジムなどに通っているあなたは、サウナのあとに水風呂を! 寒さを感じると、身体は、「エネルギーが必要」と判断し、ミトコンドリアを増やそうとしてくれるのです。

空腹感を楽しもう! 

ミトコンドリアを増やすためには、空腹を感じることが特に重要です。

空腹になると、AMPKが働き、PGC1αが活性化され、新しいミトコンドリアがつくられます。空腹感によって、ミトコンドリア新生が促されるということです。

満腹にならないよう、カロリーを25%減らした食事を6カ月間つづけることで、筋肉中のミトコンドリアが増えることが確認されています。毎食、食べ過ぎないようにするのは当然ですが、お腹が空いていないのに時間がきたから食べるということも避け、1日のうちに、「お腹がすいた」と感じる時間を数回つくることが大切です。

なお、摂取カロリーを減らすことで脂肪が分解されるときにビタミンB群の仲間であるナイアシンがつくられます。これは寝ている間にDNAの修復をして、ミトコンドリアの新生を促進してくれます。寝る前に、補助的にオメガ3系やナイアシンのサプリメントを摂ることも効果的です。

空腹感を楽しもう。ミトコンドリアの質改善&数を増やす

ファスティングで小胞体ストレスを解消

ミトコンドリアと小胞体は運命共同体ですから、小胞体の機能が低下すれば、ミトコンドリアの機能も低下します。逆をいえば、小胞体ストレスを改善し、小胞体の機能をあげれば、ミトコンドリアも機能アップするということです。

小胞体ストレスの改善には、ファスティング(絶食または、断食)が効果的とされます。ファスティングは、空腹感をのもなうことでミトコンドリアの新生をうながしますが、そればかりでなく、小胞体ストレスそのものを改善することで、ミトコンドリアの機能アップにつながります。

その理由の1つは、ファスティングによって引き起こされる‟飢餓”の状態が、オートファジーのスイッチを入れ、余分あるいは、できそこないのタンパク質をリサイクルして、小胞体ストレスの軽減に働いてくれるから。

そして、もう1つの理由は、ファスティングによる飢餓というストレスにより、ヒートショックプロテインが誘導され、正常なタンパク質づくりを補助して、小胞体ストレスの改善に貢献してくれるから。

タンパク質がきちんと働くためには、アミノ酸の鎖が正しく折りたたまれて(フォールディングされて)立体構造をつくっていることが必須です。正しくフォールディングされなければ、タンパク質はたちまち不良品になり、小胞体ストレスの原因になります。

タンパク質が正しくフォールディングされて機能を獲得するのを助けるのが、「分子シャペロン」ですが、この分子シャペロンとして働く代表的な物質がヒートショックプロテインです。

ヒートショックプロテインはストレスタンパク質とも呼ばれ、細胞がストレス条件下にさらされた時に多くあらわれて、細胞を保護するタンパク質のグループ。さまざまなストレスによって発現しますが、日常でこれを多くつくれる習慣といえば、ファスティングなのです。

長期にわたるファスティングではなくとも、1週間1回程度のプチ断食でも十分に効果があるとされます。

jhna-stresscare.info
◆活性酸素対策
小胞体ストレスの改善には、活性酸素対策も重要です。くり返しになりますが、活性酸素はDNAを傷つけます。DNAはタンパク質づくりの設計図ですから、その設計図が傷つけば、正常なタンパク質がつくれなくなります。できそこないのタンパク質は小胞体の不良在庫となり、小胞体ストレスに…。不良在庫を増やさないためには、活性酸素対策も必須です。

※小胞体ストレスおよびオートファジーについては、ファスティングの記事(準備中)で詳しくお伝えする予定です。

ミトコンドリアの機能低下以外で疲労を起こす、その他の要素

疲労をともなう、いわゆる「疲労系トラブル」の根底には、共通して「ミトコンドリア機能の低下」があるとされます。従って、ミトコンドリアを元気にすれば、疲れ知らずに毎日エネルギッシュに過ごすことができるはずです。当然、疾病予防、エイジングケアにもなります。

とはいえ、病気が絡んでいる場合は、ミトコンドリアの機能低下だけに目を向けていればいい、というわけにはいきません。「疲労系疾患は、ミトコンドリア機能の低下とともに、①持続性感染 ②ホルモン異常 ③カルシウムシグナル異常 ④隠れた炎症などが、組み合わさってトラブルが発生している」と、臨床分子栄養医学の宮澤賢史先生は、いいます。

例えば、

・慢性疲労症候群 (ミトコンドリア機能低下+持続性感染)
・副腎疲労症候群 (ミトコンドリア機能低下+[副腎]ホルモン異常)
甲状腺機能低下症 (ミトコンドリア機能低下+[甲状腺]ホルモン異常)
・起立性調節障害 (ミトコンドリア機能低下+ホルモン異常+隠れた炎症)
・線維筋痛症 (ミトコンドリア機能低下+持続性感染+カルシウムシグナル異常)

ここで詳しく説明するのは控えますが、こうようなトラブルを抱えている場合は、それぞれの要素にアプローチしていく必要がありますので、栄養療法に詳しい医師にご相談ください。

まとめ

  • 「疲れ」という症状の根底には共通してミトコンドリアの機能低下の可能性がある。

  • ミトコンドリアは、ほとんどの細胞に存在する“エネルギー生産工場”で、TCA回路および電子伝達系の2つの経路で、高度エネルギー物質であるATPがつくられている。

  • ミトコンドリアを元気にしていくことは、疲労を根底から解消していくのみならず、老化速度を遅らせ、さまざまな疾病予防にもつながる。

  • ミトコンドリアが機能低下を起こす要因は、①ビタミン&ミネラルなどの補酵素不足、②有害金属・化学物質の干渉、③活性酸素の大量発生、④カルシウム・パラドックス、⑤小胞体ストレス、⑥廃用性萎縮などである。

  • ミトコンドリアの質を上げ、数を増やしていくためには、ビタミン&ミネラルの補給、腸内環境改善、重金属のデトックス、活性酸素対策などに気をつかいつつ、廃用性萎縮を防ぐための運動および小胞体ストレス改善のためのファスティングが勧められる。


あなたが最高の健康を手にいれ、いつもハッピーで、ありますように・・。

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