トクホ(特定保健用食品)

だから、安心?

栄養機能食品だから、効果ある?

最近のテレビコマーシャルを見ていると、「トクホ」という言葉がずいぶん出てきます。「体脂肪が気になる人の○○」「コレステロールを下げる△△」「中性脂肪を減らす□□」等など、食用油から、お茶やコーヒー、はたまたソーセージやヨーグルトまで…。トクホであれば、「ダイエットや健康増進に効果があり、国のお墨付きがついているのだから、安全・安心」と思いこんでいる人も多いでしょう。でも、これって違うんですよね〜〜。

トクホは国のお墨付き?

食べ物はどのようなものでも、健康にプラスに働いてくれるなんらかの成分がふくまれています。でも、それをとりあげて、「この食品には、こんな効果がある」と宣伝して食品を販売することは、法律上、許されていません。

しかし、「トクホ」(特定保健用食品)は、食品にふくまれる"特定の成分"に"特定の保健効果"があることを厚生労働省(以下厚生省とする)が認め、「お腹の調子を整えるとか」「血圧が高めのかたの食品」など、特定の健康増進効果の表示が許されます。

トクホなら、食品メーカーは表示が認められた効能効果を大々的にPRして商品販売できます。「トクホ」=厚生省がお墨つき=安全で確実に効果のある食品、と一般消費者が思いこんでも不思議ではありません。

でも、国がお墨付をあたえているのは、あくまでも表示されている機能に対してだけなんですよ?

「これさえ摂っていれば」健康?

たとえばあるメーカーが、○○食用油に、「コレステロールを下げる」と表示して宣伝するには、その油に「コレステロールを下げる」成分がふくまれていて、実際に「コレステロールを下げる効果がある」という科学的根拠を厚労省に提出して審査をうけます。

ここでチェックされるのは、「コレステロールを下げる」根拠とその特定の成分の安全性。その油に有害なトランス脂肪酸が含まれていようが、細胞膜を弱くする可能性があろうが、その油を使いつづけたら局所ホルモンづくりができなくなり、体内バランスを保てなくなる可能性があろうが、そんなことはお構いなし。「コレステロールを下げる」ということに対してのみ、認可するかどうかが決められます。

トクホだからといって、健康全般に対してプラスの影響力があるというわけではないのです。「これさえ摂っていれば」と思いこみ、健康になるつもりが逆に健康レベルを下げることだってあり得るのです。

最近は、「トクホをとっているから」と、医師の処方する薬を拒む人も多くなっているとか。トクホは医薬品とはまったく違うのですから、病気が治ると思いこむなんて、それこそ、とんでもないことです。

栄養機能食品のほうが優れている?

体に必要な栄養素は食事から摂るのが、本来の姿です。しかし、食物そのものに含まれるビタミン・ミネラルなどの栄養素は減少の一途をたどり、流通過程や貯蔵、加工などでさらに減少。このため、いくらバランスのいい食事をしていても、必要な栄養素を十分に確保できていないのが現代人です。

だからこそサプリメントに頼るしかないのですが、そのためには「自分にあった食品を選択するための情報」が必要です。でも、サプリメントはトクホの対象外で、保健効果の表示はできません。そこで、「栄養機能食品」という分類がつくられ、栄養成分の機能表示が認められるようになりました。

「栄養機能食品」であれば、たとえばビタミンE は、「抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける」とか、カルシウムなら、「骨や歯の形成に必要」と表示ができます。現在、13種類のビタミン、5種類のミネラルにこうした表示が認められていますが、「栄養機能食品」以外のサプリメントは、あくまでも一般食品扱い。こうした表示はできません。

消費者としては、「栄養機能食品」と表示され、効用もきちんと謳ってあるのだから、これらを一般食品のサプリメントより優れた、厚生省のお墨付き商品であるように思うでしょう。ところがどっこい。実は、ここにも意外な落とし穴があるのです!

あまりにも低い目安量の上限

栄養機能食品は、個別に厚生省の許可を受けているわけではありません。国が定めた栄養成分の規格基準に一つでも適合すればそれでよく、許可申請や届け出などもまったくナシ。メーカーの自主責任で「栄養機能食品」と表示し、その栄養成分の機能の表示ができます。
栄養機能食品には、ビタミン・ミネラルなどの栄養素がある一定量ふくまれている必要があります。当然ですよね。でも問題は、1日摂取目安量の上限がかなり低く設定されていること。しかも、その科学的根拠は明確ではありません。つまり、期待する効果が望めない、摂取する意味もあまりない商品が「栄養機能食品」として、栄養機能を表示、大ぴらにPRできるわけです。

逆に、体にプラスの影響が期待できる高含有製品は、一般食品扱い。栄養成分の機能表示もできません。これで本当に、消費者は賢い選択ができるのでしょうか?

本当に消費者のため?

栄養機能食品の上限がいかに低いか、いくつか例をあげてみましょう。

ストレスの多い生活をしている普通の人が、病気を予防し、理想的な健康を保つのに必要なビタミンB12の一日の目安量は、200〜400mcgとされます。でも、栄養機能食品には、たった、0.8〜60mcg範囲での含有しか認められません。

葉酸は、「胎児の正常な発育に寄与する栄養素」。妊婦の摂取量が1日400mcgを下回るとダウン症や知能遅れの出生率が高まると、世界中の多くの研究家が発表しています。でも、日本で栄養機能食品として認められるためには、1日摂取量の上限は200 mcgとされています。これって、おかしいと思いませんか?

「栄養機能食品」という分類ができてから、健康食品業者は消費者の健康を考えて商品をつくるより、栄養機能を合法的に宣伝できるよう、指定栄養素の含有量の少ない商品をつくるようになってしまいました。消費者の健康より、機能を堂々とラベルに表示するほうが売れるからです。テレビCMで宣伝するにも有利です。少ない原材料費で、より多くの利益が確保できる…。これって、本当に消費者のためなんでしょうか?

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