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THE REQUEST 第22回

ホエイプロテインは、
ガン患者が飲んでもいいの?


 私は十年以上前から、アスリートの方はもちろん、ダイエットのため、アンチエイジングのため、健康維持のためなどなど、ホエイプロテイン〔乳清のタンパク質〕をお勧めするようになりました。超良質タンパク質を日々の食生活に組み入れることの必要性を確信しているからです。

 

 さて、このホエイプロテインですが、「ガンの成長を促すのでは?」「ガン患者がとって大丈夫?」などの質問を最近よくいただきます。ガンの患者さんは、どうしてもタンパク質不足に陥りやすいので、摂取しやすい形で良質のタンパク質を確保する必要があります。それには、アミノ酸組成が理想的で、吸収されやすく、体内での有効率も高いホエイプロテインがベストだと私は確信しているのですが、これらの質問に単純に、“YES”か、“NO”でお答えすることはできません。実は、これについては米国でも議論は多く、ホエイプロテイン使用に関しては、専門家の間でも意見が分かれているのです。

ガン患者は、成長因子を増やさない食事療法を

熟年夫婦 意見が分かれる最大の理由は、乳製品にはインスリン様成長因子(IGF-1)が含まれ、体内で生成されるものと同じ活性をもっているため、ガン細胞の成長を促す可能性があるのではないかと疑問視する声があるからです。

 動物性タンパク質が、血中のIGF-1レベルを上昇させることは確かです。これは、余分なアミノ酸が肝臓でのIGF-1生成を促すからで、アスリートや筋肉維持をしようとする高年者にとっては有利なことです。ただ、ガン患者の食事療法では成長因子を増やさないよう、砂糖(やはりIGF−1生成を促す)と乳製品は避けるべきといわれています。

 ホエイ〔乳清〕も乳製品ということで、やはりガン患者は避けるべきなのか?その判断材料として、いくつかのポイントをおさえておかなければなりません。

ホエイプロテインは、乳製品とは“別物”と考えるべき?

1)ホエイを牛乳などの乳製品と同じカテゴリーとして考える人は多いのですが、実際には、含まれる成分、機能など、内容的にかなり違い、“別物”と考えるほうが現実的といえます。高品質のホエイプロテイン製品に含まれるIGF-1は牛乳に比べずっと少ないですし、ホエイには牛乳に含まれる、乳脂肪、乳糖、カゼインなども含まれていません。

2)牛乳にはカゼイン〔タンパク質の一種〕が含まれています。「ザ・チャイナ・スタディ」の著者、T.コリン・キャンベル博士によると、カゼインはガンの成長を強力に促進するとしています(これは論争にもなっていますが…)。ホエイプロテインには、このような可能性のあるカゼインが含まれていません。(ただし、プロテイン製品によっては、ホエイにカゼインを加えたようなものもあります)

3)ガン細胞の成長には、精製された糖、インスリン、そして、IGF-1の生成などが関係していることが分っています。牛乳には、ガラクトースのような糖が含まれますが、ホエイプロテインには含まれません。これもまた、牛乳にあてはまって、ホエイには該当しない,大きな相違点です。

 高タンパク食の糖質オフ〔ケトジェニック〕ダイエットは、抗ガン食事療法として勧められています。糖が大好物なガン細胞を飢えさせ、インスリン上昇を阻止し、成長因子の生成を抑制するとされているからです。このケトジェニックダイエットにおいて、ホエイプロテインが勧められています。

ホエイプロテインは、大豆プロテインより優秀?

4)ホエイプロテインの同化作用(タンパク質合成、筋力アップ、筋肉維持、筋肉増強など)は、有利に働いてくれますし、望まれる効果を発揮してくれます。たとえば、悪液質(ガンによる体重減)においての体重維持に、ホエイプロテインは植物性プロテイン(大豆、米など)に比べ優れていることが確認されています。ガン治療において、いかに体重の減少を防ぐ、あるいは遅らせるかは非常に重要な目標ですので、ホエイプロテインには大きなメリットがあることになります。

5)ホエイプロテインは、体内のグルタチオン生産を増やすとされます。グルタチオンは強い抗酸化作用をもち、細胞を強力に保護してガンの形成を防ぐばかりでなく、発ガン物質の除去を促進し、アポトーシスを誘発します。植物性タンパク質には、グルタチオンの先駆物質であるシステインというアミノ酸が少ないので、ホエイのようにグルタチオンを増やしません。ホエイと大豆プロテインを比べたある研究では、ホエイのほうが抗腫瘍効果に優れていることが示されました

6)高品質なホエイプロテインには、ラクトフェリンやαラクトアルブミン他が含まれ、抗腫瘍作用や免疫力の向上が期待できます。また、ホエイが細胞肺癌腫のようなガンに対して印象的な作用があることが近年の研究で確認されてきています。これらは、植物性タンパク質にはない治療的なユニーク面がホエイにはあることを示します。ただし、市場のすべてのホエイプロテインにこうした優れた面があるわけではありません。

さらに考慮すべきことも…

7)乳糖をほとんど含まないホエイは、乳糖不耐性(乳製品に含まれる乳糖を消化できない)のトラブルは考えられません。しかし乳製品は、ホエイも含め、食物アレルゲンとなり得ますので、食物アレルギーまたは過敏症については考慮しなければなりません。

 乳製品に対して過敏であると、炎症レベルは上がり、消化器官への刺激も促進する可能性があります。炎症レベルが高くなることは、ガン患者にとって好ましくありません。乳製品の摂取により、鼻づまり、頭痛、飽満感、ガスの発生や痛みなど、なんらかのアレルギー症状が発生するようであれば、乳製品は避け、自然療法医の診断を仰ぐべきでしょう。

8)最後になりますが、米国の乳製品には、カナダ、EU諸国他で禁止されている、牛の成長を促進するためのウシ成長ホルモン(rBGH)が含まれている可能性があります。これはかなり強力にIGF-1を刺激します。ホエイプロテインの製品を使用する際には、原料の原産国を確認したほうがいいですね。

最終的に判断するのは、あなた自身

 いろいろ考慮すべきポイントを見てきました。ホエイプロテインがガンの成長に影響をおよぼすのかどうか、ガン患者さんが使うべきかどうか、最終判断は、ご自身でしていただくしかありません。

 私自身は、ホエイプロテインの使用についてはマイナス面よりもプラス面のほうが明らかに多いと思いますし、ガンの患者さんが高品質のホエイプロテインを使用することでのメリットは確実にあると思っています。実際、主人のガン闘病中にホエイプロテインを使用し、よかったと思っています。

 ホエイプロテインにするか、植物性のプロテインにするか、どのようなプロテイン製品を選ぶのかは、個人的な好み、ガンのステージ、食物過敏やアレルギーなどを考慮し、あなた自身が選択してください。くり返しになりますが、私は高品質のホエイプロテインをお勧めします。でも、市場にでまわるホエイプロテインがすべて同じというわけではないので、注意が必要です。ぜひ、賢い選択をしていただきたいと思います。

(参考文献)
1 Allen NE, Appleby PN, Davey GK, Kaaks R, Rinaldi S, Key TJ. The associations of diet with serum insulin-like growth factor I and its main binding proteins in 292 women meat-eaters, vegetarians, and vegans. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2002 Nov;11(11):1441-8.

2 Victor W. Ho et al. A Low Carbohydrate, High Protein Diet Slows Tumor Growth and Prevents Cancer Initiation; Cancer Res July 1, 2011 71; 4484

3 Dillon et al. Cancer cachexia and anabolic interventions: a case report. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2012 Dec;3(4):253-63.

4 Bounous G1, Batist G, Gold P. Whey proteins in cancer prevention. Cancer Lett. 1991 May 1;57(2):91-4.

5 Hakkak R1, Korourian S, Shelnutt SR, Lensing S, Ronis MJ, Badger TM. Diets containing whey proteins or soy protein isolate protect against 7,12-dimethylbenz(a)anthracene-induced mammary tumors in female rats. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2000 Jan;9(1):113-7.

6 Rodrigues L1, Teixeira J, Schmitt F, Paulsson M, Månsson HL. Lactoferrin and cancer disease prevention. Crit Rev Food Sci Nutr. 2009 Mar;49(3):203-17.

7 Grant EC. Food allergies and migraine. Lancet. 1979 May 5;1(8123):966-9.

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