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腸内環境の悪化で腸もれ!? その体調不良、もしかしたらリーキーガット症候群

リーキーガットを防いで腸内環境をよくしたい

リーキーガットを防いで腸内環境をよくしたい

慢性的なストレスにより、さまざまなストレス反応が身体にあらわれてきます。消化不良ほか胃腸のトラブル、便秘や下痢など、腸内環境の問題はとくに多い身体的反応です。

胃や腸の症状は「全くない」というあなたでも、もし原因不明の不調に悩まされているのなら、まず、腸内環境に目を向けてみましょう。

 全長7~9メートル人体で最大の器官

免疫器官としての働きが解明されはじめ、昨今、注目を集めている“腸”。腸は口、食道、胃とつづく消化管の後半部分を占めていて、大きく「小腸」と「大腸」にわけられます。

腸の全長は7~9メートルもあり、このうち栄養素と水分の90%を吸収する小腸が6~7メートルを占めます。天井の低い建物なら2~3階分の高さに相当するほどの長さです。

口から入った食物が分解されて体内に取りこまれる入り口である小腸。その粘膜面には多数の横走するヒダがあり、その表面には、1㎜足らずの、ビロードの毛のように柔らかい「絨毛」が密生しています。

腸内には、100~1000種類、細菌数にして100兆以上、重さにして1~1.5kgにもおよぶ腸内細菌が棲んでいるともいわれます。近年では、次世代シーケンサーの開発による解析技術の進歩にともない、少なくとも1800属4万種類、600兆~1000兆もの腸内細菌(現在は腸内微生物と呼ぶ)が共生しているとする報告もあります。

善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスがとれていれば問題ありませんが、腸内に未消化物質などが増え、それらをエサに悪玉菌が増殖すると、悪玉菌がつくりだす毒素によって、腸内環境が乱れ、腸粘膜のバリア機能に問題がおこることに...!

 腸壁のバリア崩壊で体内に“毒”が入りこむ

食べ物は歯で噛み砕かれ、消化を促す唾液と混じりあいながら胃へ送り込まれ、ここでさらに胃酸や消化酵素を浴びて粥状にされてから小腸へと移動します。

小腸は胃で一部消化された食べ物をさらに小さくするための分解工場。タンパク質分解酵素をはじめとする各種の消化酵素は、主に小腸に分泌されます。

ここでさらに消化酵素を浴びせかけられた食べ物は、腸壁の上皮細胞内に吸収されるサイズにまで分解されます。

ところが、近年、ストレスが蔓延しているからでしょうか、この小腸にかなり深刻なトラブルを抱えている人が増えつつあるようです。

そのトラブルとは、腸壁のバリアの崩壊

健康な腸壁は、タンパク質、脂質、糖質などが適切に消化された分子だけを通過させるようにできています。同時に、腸管に常在するといわれる1000兆以上の腸内微生物などから腸管の組織を守り、また、腸内微生物に対する過剰な免疫応答を避けるため、腸管の上皮細胞でつくられる、粘膜バリアが存在します。

このバリアは、病原性の微生物はもちろん、外来のさまざまな異物(有害物質)の侵入をストップするための重要な防波堤です。

ところが、遺伝的あるいは環境要因、ストレスなどによってバリア機能が低下したり、腸内フローラのバランスが崩れると、上皮細胞組織内への腸内微生物の侵入や、 悪玉菌がつくりだす毒素によって腸管に炎症がひきおこされ、組織はダメージをうけます

また、未消化タンパク質の刺激などにより、上皮細胞間を結合しているタイトジャンクションが開放されます。

ダメージをうけた腸壁は穴があいたような状態となり、漏れやすくなります。すると、本来ならば血管内に入れないはずの未消化のタンパク質や有害物質(腸内微生物が産生する毒素、ウイルスや細菌、水銀などの重金属、化学物質、農薬、添加物など)までもが、血液中に侵入することになります。

このように腸が漏れやすくなることを リーキー(leaky=漏れやすい)ガット (gut=腸)、そのために引き起こされるさまざまな症状を、リーキーガット症候群(腸管透過性)と呼びます。

 肌あれ、慢性疲労…根底にリーキーガット?

リーキーガット症候群は、私たちの身体にあらわれる、さまざま症状や疾病の根底にあると考えられています。リーキーガット症候群そのものは、病気ではありません。しかし、消化-腸内フローラ-免疫系との関係性について解明されてくるにつれ、リーキーガットによる健康被害のリストは年々増えつづけています。

ダメージをうけた腸壁は、バリア機能を発揮できないため、体にとっての有害物質が体内に進入してきます。こうした事態は、免疫系を刺激し、アレルギーの発症や自己免疫疾患、化学物質過敏症などもひきおこしやすくします。

リーキーガット症候群に気づかないでいると、時間の経過とともに、状況は徐々に悪化。過敏反応をおこす食べものや環境有害物の種類が増えていきます。それにともなって、さまざまな反応があらわれ、健康問題が表面化してきます。

そればかりか、腸壁のダメージにより、本来、腸管から吸収されるべき栄養素の吸収不全が発生し、細胞が必要としている栄養素の供給にも支障がでてきます。たとえば、腸壁のダメージを修復するために必要なタンパク質をはじめとする栄養素が不足すれば、リーキーガットはさらに悪化することになり、悪循環に陥ります。

タンパク質をはじめとする各種栄養素は免疫機能にも、神経系や内分泌系にも重要ですから、体内のホメオスタシスの維持が難しくなり、精神面にも肉体面にも影響が出ることになります。

もともと吸収されにくい、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルはさらに吸収率が落ち、骨粗鬆症や筋肉痙攣といったミネラル不足による症状に悩まされることになるかもしれません。

過敏性大腸炎やクローン病などの腸疾患、便秘、下痢、ニキビや湿疹などの肌あれ、アレルギー、化学薬品過敏症、関節炎、ぜんそく、不眠、慢性疲労、慢性的な筋肉痛ほか、あらゆる症状の根底には、リーキーガットがあるといわれているのです。健康な女性の内臓脂肪の蓄積や肝脂肪の増加の原因にもなるという報告があります。

 腸内環境を整えながら、壁バリアの修復を!

リーキーガット症候群をおこす原因は多々あります。それらをあげると:

食事からのタンパク質(グルテン、カゼインなど)、胃酸&消化酵素不足、血糖関連の問題、抗生物質の使用、カンジダ菌、食物アレルギー、ストレス等など。

リーキーガット症候群の解消、リーキーガットの修復には、これら原因を考慮しつつ、腸管機能の修復、腸内環境の改善をすすめなければなりません。この目的のためには多くの栄養素が必要になります。

 消化力のアップ

まず大事なのは、よく噛んで食べること。噛む回数が増えると唾液の分泌量が増えて消化力がアップします。

さらに、消化酵素系のサプリの利用がすすめられます。糖質、脂質、特にタンパク質の消化が十分でないと、未消化物質が悪玉菌のエサになり、これら悪玉菌が発生するガスが腸壁にダメージを与えます。

また、リーキーガット症候群は、グルテン除去や乳製品の除去から取り組むことがすすめられますが、これらを完全にカットすることはなかなか難しいといえます。そのような時には、グルテンやカゼインに特異的に作用する消化酵素サプリをうまく使用するといいでしょう。

 プロバイオティクスをうまく活用

腸内環境の改善には、善玉菌のエサになる食品をとる(プレバイオティクス)、乳酸菌などを直接とっていく(プロバイオティクス)、あるいは、その両方をとり入れる(シンバイオティクス)などの方法があります。

腸壁にダメージがある場合、食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスは症状を悪化させる懸念もあるため、プロバイオティクスの利用がすすめられます。

プロバイオティクスを摂る場合は、複数の菌種を組み合わせること、また、1日500億個程度の乳酸菌数のものを選ぶようにします。

カンジダ菌対策

カンジダ菌が関わっている場合は、かなり厄介です。カンジダ菌はとてもしぶとく、いったん増殖し根をはってしまうと、正常範囲にもどすことが極めて難しくなります。これについては、別の記事で詳しくお話しします。腸壁の修復とカンジダ菌対策は同時進行していくことになります。

 栄養素の確保

栄養素の確保も大変重要です。腸壁がダメージをうけると活性酸素が大量に発生し、さらなる刺激と炎症により、リーキーガット症候群の悪化を招きます。活性酸素の攻撃から腸壁を守氏は、ビタミンE、セレニウム、N-アセチルシステイン、SOD、亜鉛、マンガン、銅、CoQ10,αリポ酸、ビタミンCなどの抗酸化栄養素やミネラルが必須です。

腸粘膜の修復をサポートする栄養素は、グルタミン、γ-オリザノール、ビタミンA、パントテン酸、葉酸、亜鉛などですが、腸壁は代謝回転がとても速いので、良質のタンパク質をしっかり確保することを忘れてはなりません。フリーフォームのアミノ酸の摂取が必要になるケースもあります。

 ストレスケア

ストレス時は、交感神経が優位になるため、唾液は減少、胃酸も消化酵素も減少、胃腸の蠕動運動も低下し、全般的に消化力が低下します。このため、腸壁を刺激する原因となるタンパク質の分解がうまくいかなくなります。

さらに、ストレス時分泌されるアドレナリンは、腸内フローラにダメージを与えます。腸内微生物は、私たちが食べたものの消化にも関わっているので、さらに消化低下が起こります。そればかりか、腸内微生物のバランスが崩れ、カンジダ菌の増殖につながります。カンジダ菌の増殖は、リーキーガットにもっとも大きく関わっているといっても過言ではありません。

長びくコロナ禍、不規則な生活、面倒な対人関係、多忙な仕事…。自覚していようがいまいが、現代人は慢性的なストレス状態にあります。ほっと一息つく時間を意識的につくる、瞑想やヨガ、呼吸法、運動、森林浴、アロマテラピー、ジャーナリング、しっかり睡眠をとるなど、あなたにあった方法でストレサー(ストレス要因)に上手対応すると同時に、ストレス時に消費される栄養素をしっかり摂ることを心がけ、身体を守ってください。

 まとめ

  • 小腸に未消化物が増えると、それをエサにする悪玉菌が増殖し、悪玉菌がつくりだす毒素によって、腸粘膜のバリア機能に問題がおこることがある。

  • 腸壁のバリアの崩壊により小腸表面の網の目が大きく広がって漏れやすくなったことで引き起こされる症状を、リーキーガット症候群(腸管透過性)と呼ぶ。

  • 腸とは関係のないような体調不良も、根底にはリーキーガットがあるといわれている。

  • 腸壁修復には、ストレスケアをしっかりしつつ、消化力アップ、プロバイオティクスの活用、必要な栄養素の十分な補給が重要。


あなたが最高の健康を手にいれ、いつもハッピーで、ありますように・・。

 

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